雛人形の値段の違いの理由は?事例を交えて職人目線から解説!

雛人形の値段の違いの理由は?事例を交えて職人目線から解説!

ひとえに雛人形と言ってもその価格はピンキリ。

「どのくらいの予算で買えばいいかわからない」
「安い雛人形だと何か良くないのかな?」
「高い人形は他の人形と何が違うんだろう?」

といった疑問は尽きません。実際のお客様からのよくあるご質問の一つでもあります。

「高い商品」は「いわゆる良い商品」であるのは雛人形にも言えますが、だからと言って「高い商品」が「自分や子供・家族にとって良い商品」であるとは限りません。

今回は創業約100年の老舗『人形工房 左京』の4代目跡継ぎが雛人形の価格に差が出るポイントについて解説すると同時に、価格に左右されすぎず理想の商品選びをするための重要な視点についても説明します。

雛人形の商品選びに重要な視点を多く解説しており、雛人形選びの参考になること間違いありませんのでぜひご一読ください! 動画でも解説していますので文章を読むのが面倒な方はこちらをご覧ください。 ※1.5~2倍速での閲覧がオススメです!

雛人形の値段に違いが出るポイント

雛人形の値段の差が出やすい、特に重要なポイントについて挙げていきます。

人形の数と大きさの違い

雛人形には女雛(お姫様)と男雛(お殿様)のペア(親王飾り)を基本とし三人官女、五人囃子、右大臣・左大臣(正確には大臣ではなく警護役)、三人の仕丁など様々なお人形の種類があります。

当然、人形が多い分、人形セットの予算・飾り台の予算(人形が増えるごとに三段・五段・七段と必要になってききます)・装飾品の予算などが上がっていきます。

また、人形が大きいほど予算も高くなりがちです。

迷ったら将来的な「買い足し」も視野に

近年は二人飾り・三段飾りなどすでにセットになっている商品での販売が基本ですが、昔はむしろ単品の「買い足し」が主流でした。

最初から人形の多いセットを買うだけでなく、後から追加したくなった時に買い足すことも可能です。人形・雛段・お道具など、後からの追加購入など、専門店を中心として柔軟に対応してくれるお店も多いです。また「買い足しするかも」と伝えておくことで少し余白を考えたセット提案を受けることもできるでしょう。

着物の作りと着せ付け作家による違い

雛人形の中でも一際目を引くのが豪華絢爛な着物。この着物の素材やつくりによって価格が変わります。

着物の生地素材と作りによる違い

雛人形の着物の生地は大まかにわけると「絹」と「ポリエステル」の2種類。2つの混合種も存在します。

絹でつくられた着物をまとった人形は価格が高価になりがちですが、着物の色の美しさ・肌触り・艶感などは化学繊維に出せない深い味わいがあります。

ポリエステルであっても、生地の上に施される刺繍など生地加工の厚みや複雑さ・糸色の数・工程の数などによって、絹地と同じかそれ以上の値段になることもあります。

また、着物を重ねたときに綺麗に仕上がるようにつくり込まれているか、袖口・衿口が丁寧に仕立てられているかといった仕立て全体の細やかさも価格に影響します。

雛人形作家のこだわりが形に出る

着物一枚一枚がどこまで丁寧に作られているかは、着物の着せ付け作家のこだわりが色濃く出るところです。雛人形作家にはそれぞれ独自の美学があり、各々の美を表現するために生地選びや縫製の方法まで考え練られます。そのため作家によって制作の手間が大きく異なり、これが雛人形の料金の違いとなります。

作家ごとの特徴が一番わかりやすく出るのは雛人形を前から見たときの手の長さ・位置・全体の重心。これらは「かいな折り」と呼ばれる雛人形の最後のポージングを決める行程によって変わるもので、通常は工房の「親方」のみが行う雛人形づくりの最も重要な作業です。

これは実物をいくつか見てみないと判断が難しいところですが、一般的に高級品は左右対称で重心が低く安定していて、見るからに安心感と高級感を醸し出します。

また、作業工程が変わるものの、木目込み人形に関しても同じことが言えます。 重心や形の安定性・本物のような自然な生地の動きが型で表現されています。

いずれも、ご自身の目でいくつかの種類を見てみることで好みや良し悪しを判断できるようになるのが面白いところ。是非、専門店をいくつか回ってみて説明を聞きながら雛人形の世界を覗いてみてください!

雛人形の着物に関するポイントはこちらの記事でも解説しているので興味があればご一読ください!

人形のお顔による違い

人形のお顔の造りの精巧さや造り方によっても価格に差が出ます。

お顔の型はある程度流れ作業ですが、顔型の上にほどこされる眉や頬のお化粧は職人の腕の違いが出ます。じっくり見ると同じ型番のお顔でも決して「全く同じ」仕上がりにはなっていません。お化粧の自然さや美しさが芸術品としての価値を高める要因となります。

また、現代の雛人形はシリコンの型に石膏を流し込む「石膏頭」が主流ですが、現代でも極稀に伝統的な手掘りの「桐塑頭(とうそがしら)」で造られた人形があり、これは大変高額になりがちです。

お道具による違い

飾りの中で人形を引き立てる名脇役である数々のお道具も形や素材にこだわると価格も相応に上がりがちです。雛人形のセットは「皇族の結婚式」をモチーフにしているので、お道具も結婚式に関係するご馳走や装飾、縁起のいいアイテムや嫁入り道具などが並びます。

お道具の種類には定番ものからマイナーなもの、地域特有のものまであり特別な決まりはありません。既存のセットに買い足して増やしていってもよいでしょう。

お道具は、金箔・蒔絵(まきえ)・漆などの高級素材や伝統技法の有無などで価格差が出てきます。特に、主役のお殿様・お姫様の後ろに置くお屏風やお人形を並べる飾り台そのものはこだわると雛人形本体よりも価格が高くなってしまうこともあります。

【重要】同じ価格でも内訳次第でまったく別物の商品

雛人形の価格に差が出るポイントを複数説明しましたが、最も重要なのは同じ価格でも何に予算が割かれているのかによって全く別の商品になるということです。

例えば、同じ「15万円」の商品だとしても下記のA、Bは全く別物です。

[雛人形セットA] 雛人形3万円 / 収納台・屏風10万円 / その他お道具2万円
[雛人形セットB] 雛人形:10万円 / 台:2万円 / 屏風:3万円

雛人形セットAの方は人形やお道具を飾る台が、シーズン外はそのまま収納箱になる「収納飾り」にありがちな予算の割り振りです。

収納箱も兼ねた飾り台は多くが木製で、費用も高額になりがち。必然的に同じ予算の中で考えると台に予算が割かれていない商品と比較して人形の造りは簡素なものにならざるをえません。

雛人形のセットの中でどこに予算を割くかは個々のニーズ次第ではありますが、雛人形職人の視点では、収納台に大きな予算が割かれている商品は「人形」ではなく「台≒家具」を買っているのと変わらないように感じてしまうためあまりオススメはしていません。

セットの中でも雛人形本体に比重を置くことで、全体の予算10万円以下でも工芸品として十分立派な人形をお求めいただけます(例えば、飾り台ではなく絨毯状の「毛せん」の上に飾ることで予算を抑えながらも華やかに演出できます)。

雛人形は高ければ良いというものでもない


雛人形の価格に差が出るポイントをいくつか紹介しました。基本的にはやはり高い商品の方がいわゆる「一般的に良い商品」であり、間違いないと言えます。

とはいえ「自分が欲しい商品」のニーズは人によって大きく異なります。必ずしも高いものがマッチするとは限らないので、価格に左右されず理想の商品を見つけるための視点をお話しします。

雛人形をどのような位置づけで求めるのか

雛人形という商品をカテゴリ別にで大まかに分けると
  1. おもちゃ
  2. インテリア
  3. アート

の3つに分けることができます。

「おもちゃ」はプラスチック製品や、小さくて簡素な人形であれば数千円から手に入ります。逆に「アート」の世界ともなると価格相場はあってないようなもの。100万円を超えるものも存在します。

「インテリア」の中でも、伝統に忠実な工芸品もあれば、伝統と現代的要素を上手く融合させた人形、伝統とはかけ離れつつもインテリアとしての価値の高いおしゃれな人形など様々なものがあります。

雛人形をどういった位置づけで捉えるのか、どのカテゴリの商品を求めるのかによって相場や予算は大きく異なります。

たとえば雛人形の本来の役目である「お守り」であれば、気持ちの問題でもあるため「おもちゃ」であってもその役割を十分に果たすことでしょう。

一方、人形そのものの美しさを眺めて楽しみたいのであれば「インテリア」として緻密に設計し造られたものを探した方がご満足いただけるはずです。

また、お子様の祖父母様からの「出産祝い品」と考えれば、何年先も廃れることのない「インテリア ~ アート」というカテゴリから想い出の品を探すことも大事でしょう。

こういったことを参考に、ご自身にとっての雛人形の位置づけを今一度考えた上で、最適なカテゴリの相場・予算の中で探されることをおすすめします。

どんなポイントを重視したいのか

一部繰り返しになってしまいますが、雛人形というジャンルには様々な商品ラインナップがあります。 同じ価格帯の商品でも
  • 人形のお顔の美しさにこだわっている
  • 着物の綺麗さにこだわっている
  • 飾り全体の豪華さにこだわっている

など、どこに力を入れているかによってまったく違う印象の作品に仕上がります

全てにこだわるのであれば、ある程度の予算は必要かもしれません。しかし、こだわりポイントを絞るのであればそれほど予算をかけなくとも望む以上の商品が見つかるでしょう。

逆に想定よりも多少予算をかけたとしても、こだわりのポイントを網羅していなければ心残りがでてしまうかもしれません。そういった意味でもご自身が雛人形のどういった点を重視したいのかを決めながら雛人形選びをすることをおすすめします。

まとめ


価格が高い雛人形は「一般的に良いとされる」商品である可能性は高いですが、それが必ずしもご自身にとって良い商品であるとは限りません。

価格も商品の良し悪しを判断する参考にはなりますが、もっと大切なのはご自身にとって「雛人形とは何か」(お守りなのか飾りなのか自宅に飾るアートなのか)、雛人形の「どのような部分を重視するのか」といった雛人形選びの軸を明確にすること

ぜひ、今回の記事を参考に「どんな雛人形が欲しいか」という視点から考えてみてください! ご自身で考えるのが難しい場合は、直接店舗にご来店いただくか、LINE公式からもご相談を承っています。ご要望の整理からお手伝いさせていただきます!

直接のご来店もお待ちしております!