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ひな祭り

雛人形お下がりNG論争を現役職人が斬る!【ポジショントークなし】

「雛人形は一人一つ」は雛人形業界の陰謀なのか?この論争に雛人形職人が真っ向から答えます!

「雛人形は一人一つ」という日本人形協会のメッセージが炎上したことがありました。

中には

「それは人形をたくさん売りたい雛人形業界の陰謀だ!」

という意見まで。

そんな論争に伝統や正直な業界事情も交えながら、創業約100年の老舗『人形工房 左京』の4代目跡継ぎが、ポジショントークなしで中立に解説していきます。

雛人形をお下がりにしてよいのか考えている方はもちろんのこと、この論争の答えを求めている方にご自身なりの結論を出す参考にもなれると思いますので、ぜひご一読ください!

動画でも解説していますので文章を読むのが面倒な方はこちらをご覧ください。
※1.5~2倍速での閲覧がオススメです!

【結論】雛人形のお下がりNG論争に絶対的な正解はない

「それでいいの?」と言われてしまいそうですが

「絶対的な正解はない!」

というのが、伝統と現代の事情を踏まえた上での中立的な結論です。

もう少し詳しく言うと、「ひな祭り」・「雛人形」をどう捉えるか、「伝統を重視」なのか「イベントとして楽しみたいのか」によって結論が変わります。

雛人形のルーツから考えると娘・妹のお下がりはNG

まず、雛人形の伝統・本来の意味を重視する場合はお下がりはNGです。母→娘へのお下がりはもちろんのこと、姉→妹へのお下がりや、姉妹での共有も望ましくありません。

雛人形は本来、子供の健やかな成長を祈り、子供に降り注ぐ厄を代わりに引き受けてくれるお守り。

雛人形(=お守り)をお下がりにすることは、神社の無病息災のお守りを何年も大事に使った後に誰かにあげることと同じです。

つまり、厄を取り終えた人形は元の持ち主から引き受けた厄を抱えた状態。「厄移し」という古くからの信仰を元に考えると、厄を含む雛人形を誰かに引き継ぐのはよくないことなのです。

(※詳しくは後述しますが、人形が気に入っていてどうしてもお下がりにしたいという場合、お寺や神社で「厄払い」をしてから、であれば心配ありません。)

また、雛人形が人の形をしている通り、身代わりになれるのは1セット1人まで。そういった意味では一人の子供につき一つ(1セット)の人形を用意するのが伝統的なひな祭りを重んじた考え方です。

必然的に「姉妹間でのお下がり・共有もすべきではない」というのが伝統の視点からの結論。「一つでも多くの雛人形を売りたい!」というような業界の陰謀ではないし、 日本人形協会もそういった意図でメッセージを出したわけではないはずです。

イベント・エンタメ重視であればお下がりを気にしない考えも

一方で「何がなんでも一人一つ絶対に用意してください!!」と言うつもりもありません。

伝統を重視するならば「一人一つ」ですが、その伝統をルールのように押し付けたくはありません。本来、お祭りは楽しいからやること。伝統文化も楽しくつないでいかなくては意味がありません。

最近は伝統文化として、というよりもイベントとしてのひな祭りを楽しむ方も多くいらっしゃいます。

「3月3日には雛人形を囲って、家を可愛く飾りつけして、ケーキやご馳走を食べる!」

といったように。

ひな祭りをカジュアルなイベントと捉え、雛人形はイベントの中の一つの飾りつけ、くらいの位置づけで楽しむのであれば「お下がりNG!」・「一人一つ必須!」というようなことを強く意識しすぎては、せっかくのお祭りを楽しめなくなってしまいます。

雛人形職人としてはそうした場合の「お下がり」でも厄払いのご案内はしますが、考え方として「全然気にしない」のであれば、それはそれで構わないと思っています。

【職人の願い】伝統は、意味を知った上でどれだけ取り入れるかを決めて

まとめると

  • ひな祭りという伝統の本質を重視する場合→お下がりはNG
  • ひな祭りの意味や伝統よりも、1イベントとして楽しむ場合→お下がりは気にしなくてもOK

ということ。

できれば伝統についてはきちんと知った上で、どれだけ伝統の中身を重視するのか(もしくは重視しないのか)を決めていただければと思っています。

  • 「伝統文化は繋がれてきた意味までちゃんと重視したい!」
  • 「あくまでお祭りとして楽しめればいい(イベント重視)」

この割合が何%ずつかによって、雛人形との向き合い方が変わってきます。

僕たち雛人形職人としても、お客様ごとの考え方がある程度定まっていれば、そのお考えや予算・飾るスペースなどの事情に合わせた柔軟な提案ができます(逆に固定の価値観に基づいた提案を押し付けてくる業者は選ばないことも重要です)。

お下がりにしたいほど大切な雛人形への考え方

「雛人形のお下がりはNGか?」という疑問に対する答えは、「考え方次第」でした。

そうすると、お子様へのお下がりにしたいほど大切にしていた雛人形をどうすればよいのか、改めて悩まれることもあるかもしれません。どうすればいいのか迷う雛人形の扱い方について、考え方をいくつか紹介します。

感謝の気持ちを込めて処分(供養)する

お守りとして見守ってくれていた愛着のある雛人形を処分するというのは気が引ける方もいらっしゃるかもしれません。しかし、無事お守りとしての役目を果たすことができた雛人形は処分してしまって問題ありません

もしかしたら「変な捨て方をすると呪われてしまうかも」などと思われるかもしれませんが、雛人形の「呪い・祟り」といったものは存在しません(こちらの記事でも詳しく解説しています!)ので、その点はご安心ください。

処分の仕方として最も気持ちに整理がつきやすいのはお寺や寺院に持ち込んで「供養」することですが、必ずしもそこまでしなければならないわけではなく、「供養代行サービス」を使ったり、一般ゴミとしてご自身で処分されても構いません。

もしご自身でゴミとして処分することに少し抵抗があるようなら、捨てる前に清めのお塩をかけたり、感謝の気持ちを込めて手を合わせたりといったお別れをきちんとするのも一つです。

詳しくはこちらの記事にもまとめています!

お守りの役目を終えた雛人形をインテリアとして飾るのもOK

人形に愛着がありどうしても捨てたくないという場合、お守りとしての役目を終えた雛人形を毎年インテリアとして飾り続けてもOKです。

雛人形はお守りとしての意味合いが強いですが、伝統工芸品でもあります。本来の役目を終えた人形を工芸品として飾って楽しんでいただくのも一つ。

人形がスペースを取るため全てを残しておくことが難しい、という場合はお殿様・お姫様だけを残すような形もおすすめです。

やはりお下がりにする場合は、厄払いをしてから

色々と考えたうえで最終的な結論として「お下がりにする!」のであればそれはそれで一つの選択ですが、その場合は厄払いをおすすめしています。

繰り返しになりますが伝統的な考え方では、雛人形は元々守っていた人の厄を代わりに引き受けてくれているので、役目を終えた人形にはその厄が残っている状態。そのような状態でお下がりにするのはやはりお気持ちの問題としても不安が残ることと思います。

万が一何かあった時に「人形を譲ったせいかもしれない」などと思わなくて済むよう、お下がりにする前に一度神社やお寺で厄払いを行うことをお気持ちの面からもおすすめします。

二人目の雛人形はどうすべき?お下がり・共有・追加購入など

次女や三女が生まれたとき、都度購入するのか、一家に一セット(「お下がり」というより「共有」)なのか、迷うこともあると思います。

結論としては、繰り返しになりますが捉え方次第

本来の意味からすれば、雛人形は「一人一つ」。ただ、女の子が生まれるたびにセットを増やしていては予算も飾るスペースも限界があり、現実的ではありません。

雛人形メーカーの目線から実際にお客様に提案している考え方を紹介します。

伝統に倣い、一人一つ

子供一人のお守りの人形が一つ(1セット)、という考え方を遵守するのであれば、女の子が生まれるごとに人形を買い足していくのが自然です。

最初の人形と同じサイズの人形を用意するのが難しい場合、小さな人形を買い足すのが良いです。

ただ、人形の大きさや華やかさに差があると、下のお子様に不公平感が残ってしまうこともあるのでご注意ください。

お殿様・お姫様(男雛・女雛)の人形を足したセットにする

現実的にもう1セットは飾るスペースがないという場合、例えば1セット目の飾りの中に取り入れられるような形でお殿様・お姫様(男雛・女雛)の人形のセットを追加購入するということもできます。専門店ではお客様ごとの細かなご要望に柔軟な対応ができることも多いです。

もちろん、左京でも喜んで対応させていただきます!

二人目を思う気持ちがちゃんとあれば共有セットでも厄取りは十分

厳密には「一人一つ」が雛人形の本来の伝統ではありますが、伝統をうまく現代のライフスタイルに合わせて再解釈することもできます。

1セットを姉妹共有にしても、二人目のお子様の成長を願う確かな気持ちがあれば十分、雛人形のお守りとしての効果はあります。

この辺りは考え方や気持ちの問題が強いです。伝統についてきちんと知っていただいた上で、伝統とライフスタイルを上手く融合させながら納得のいく形を探っていただきたいです。

三人官女の人形を追加したり、道具のセットを追加したりと1セットでも華やかにしていくことでも「姉妹共有の雛人形」を思い入れの強いものにできます。

まとめ

雛人形のお下がりはNGか、という論点に雛人形職人が真正面から答えました。「雛人形は一人一つ」ルールは雛人形業界の陰謀ではなく、雛人形本来の意味から言えば本当のことです。

でも、伝統に縛られて悩んだり苦しんだりするのは本末転倒。伝統やルーツについて、一度きちんと知っていただいた上で、ライフスタイルの中に無理のない形でうまく取り入れて楽しむのが一番です。

そういった視点で改めてひな祭り・雛人形をどう捉えるのか(伝統重視orイベント重視)を考えていただくことが、「お下がり問題」にとどまらず伝統文化との付き合い方に繋がっていきます。

左京ではお客様の考え方や予算・住宅のご事情に合わせても最適なご提案をさせていただきます。ご質問でもご相談でも是非LINEからお気軽にお問い合わせください!

株式会社左京 / 四代目
Writer - 望月 琢矢
静岡の雛人形工房(株式会社左京)の4代目。1991年生まれ。静岡県静岡市出身。東京の大学在学中に留学・海外一人旅などを通じて外国から見た自分・日本を考えるようになる。大学卒業後2年間、東京の上場企業にて会社員を経て2016年から家業である株式会社左京に入社し雛人形制作に携わる。海外経験のある若者代表として、これからの雛文化・伝統文化について考え、試行錯誤の日々。日本の伝統文化が世界から評価されれば日本人は覚醒する!と信じ、静岡発の世界ブランドを作ることを目指しています。 ★Instagram フォロワー18,000人超
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