五月人形選びにおいて、重要なポイントの一つがサイズ。
「せっかく飾るのだから見栄えのする大きなものが欲しい」
「コンパクトに飾れつつも、存在感があってしっかりした作りのものが欲しい」
などと様々な需要があります。ご予算や飾るスペースなどのご事情との兼ね合いになってくる部分も大きいですよね。
しかし、五月人形のサイズは仕様を見るだけではイメージしづらいところ。そこで今回は創業約100年の老舗『人形工房 左京』の4代目店主が、五月人形の「サイズ」について、業界で使われている基準や実際の商品を飾った写真を紹介しながら解説していきます。
五月人形のサイズに関して知識が深まるだけでなく、五月人形選びの中で理想の一品をイメージするためのヒントにもなると思いますのでぜひご一読ください!
五月人形のサイズ表記「号」を当社基準で説明!
まず、多くの方が人形選びの際にサイズの基準として参考にされると思う「号」について、実際に当店での基準を紹介しながら解説していきます。
五月人形の「号」は業界統一の基準ではない!
まず大前提として、「号」は業界共通のしっかりとした規格というわけではありません。
例えば「8号」というと比較的小さめのサイズ、「12号」というと比較的大きめのサイズ、「15号」だと特大サイズ、くらいのなんとなくの共通イメージはあるものの、具体的に「〇号はタテ〇センチ、横〇センチ、高さ〇センチ・・・」といった厳密な規格はありません。甲冑メーカーによって基準がバラバラなのです。
もしかすると「いい加減な業界だな・・・」と思われてしまうかもしれませんね。しかし、五月人形、特に専門の職人が作る伝統工芸品はそれぞれが一点ものの商品。作り手も個人の作家から大規模メーカーまでさまざま。そのため、共通の規格が用意されなかったという事情もあります。
数少ない判断基準の「号」ですら曖昧となるとお客様目線では不便に感じられるとは思いますが、商品それぞれが唯一無二であることが五月人形の魅力でもあることもわかってもらえると嬉しいです!
【左京基準】兜・鎧のサイズと号数の目安
参考までに、当社基準ですがサイズと号数の目安について兜・鎧それぞれで紹介していきます。
業界の平均的な水準とかけ離れてはいないはずですが、他社の商品によっては同じ号数でもサイズが大きく離れている可能性もあるのでご注意ください。
なお、左京では号数に対してよりわかりやすく、以下のような「サイズ」での商品カテゴライズを行っています。
- 豆
- 極小
- 小
- 中
- 大
- 特大(※鎧のみ)
兜のサイズの参考
兜のサイズ分けは以下の通りです。- ~5号(豆サイズ):間口 30cm以下に収まる最小サイズ
- 6~8号(極小サイズ):間口 20cm~60cm
- 8~9号(小サイズ):間口 20~60cm
- 10~11号(中サイズ):間口 40~75cm
- 12~15号(大サイズ):間口 40~75cm
間口は参考程度なのですが、比べていただくとわかる通りサイズ感にかなり被りがあります
大きさに関しては正直同じ号数でもデザインによってかなり異なる上、人形そのものの大小よりも飾り方の工夫の方が重要です(次項目にて写真つきでご紹介)。
鎧のサイズと号数の目安
続いて鎧のサイズについて。こちらも兜同様間口は大まかな目安で、デザインによって大きく異なるため参考程度にご確認ください。- 5号以下(小サイズ):間口 60cm以下に収まる最小サイズ
- 6号~9号(中サイズ):間口 60~75cm
- 10号~11号(大サイズ):間口 75~90cm
- 12号以上(特大サイズ):間口 90~120cm以上
飾った写真で確認!サイズ別の五月人形のイメージ
サイズについて参考の数字を出しながら説明しましたが、結局直接どのくらいの大きさなのかは「飾った実物の写真」を見ていただくのが一番早く、わかりやすいと思います。 異なるサイズの商品の写真を紹介していきますので、イメージを持っていただけると嬉しいです!左京 - 豆サイズ:~5号
「ちょこん」と置くことのできる豆サイズ。どういった飾り方をされてもスペースを取ることがないため、どこにでも無理なく置いていただくことができます。 これだけ小さいサイズであっても、工芸品としてお楽しみいただけるところまで実感してもらえると嬉しいです。
左京 - 極小サイズ:6~7号
コンパクトで場所を取らない極小サイズです。側に弓矢や刀を飾ってもスペースを取らないことがわかりますね。 小さな兜でも十分に存在感がありますが、横にお好きな装飾品を飾っていただくことで、より華やかなセットにもできます。
左京 - 小サイズ:8~9号
棚や箪笥の上にも飾れる小サイズ。程よく存在感がありつつも、コンパクトに飾ることができます。 写真のように小さなテーブルの上に飾っていただくような形でも、大幅なスペースはとらずにお部屋を華やげてくれます。
左京 - 中サイズ:10号
中サイズ。写真の兜は三日月型の鍬形の幅が広いですが、櫃を飾り台として使って高さを出すことで台のすぐそばに装飾品を置けるように工夫されています。
左京 - 大サイズ:12号
当店の兜のカテゴリでは最大にあたる大サイズ。部屋の間取りの一角を占める存在感抜群の五月人形です。 兜自体のインパクトが大きいため、装飾品をシンプルにしても全体のバランスが良い、見栄えのするセットになりますね。
五月人形の大きさ選びで考えるべきポイント
実際に飾ってある写真でご確認いただくことで、表記されているサイズよりも、デザインや飾り方の方が重要であることをご理解いただけたのではないでしょうか?
ここで改めて、五月人形選びに関して「大きさ」の観点から重要なポイントについて説明します。
飾るスペース・収納するスペースが確保できるか
五月人形の大きさ選びでまずネックになるのは飾るスペースの制限。とはいえ、写真でご確認いただいている通り、飾り方の工夫次第で人形そのものの大きさにはあまり左右されずに様々な飾り方がお楽しみいただけます。
もう一点、気にしなければならないのが収納のスペース。飾っているときは見栄えがしても収納している時にスペースを取ってしまうと煩わしく感じてしまうこともあります。
飾った時のサイズだけでなく、収納したときのサイズも意外と重要なポイントになってくるのでアイテム選びの際、ぜひ抑えておいてください。
インテリアとして部屋の景観を損なわないか
端午の節句のシーズンに五月人形を飾ると部屋の印象は大きく変わります。年に一度の行事だからと存在感のある大きな人形を飾って部屋の一角を陣取るのも良いのでしょう
しかし、あまりに大きくて「悪目立ちしている」と感じると、毎年飾るのが面倒になってしまうかもしれません。嫌々仕方なく飾るご両親の姿をお子様に見せては、家庭でも文化に対するイメージが悪くなってしまいます。
大きさが煩わしさにならないように長い目線で心から好きになれるもの、そしてみんなで楽しめるものを考えた方が良さそうです。
予算・作りと大きさのバランス
五月人形の価格は使う素材(金具)や技術によっても変わるため、必ずしも大きさと比例しません。
しかし、同じ業者の似たような素材を使っている商品であれば、大きい方が予算も上がりがち。限られた予算の中で大きなものにこだわろうとすると、どうしても素材が安く、作りが簡素になってしまいます。
代表的なのが着用して遊べる着用兜・着用鎧。子供が着用できるため、当然大きなサイズの商品ですが、安全性や軽さを考慮してプラスチックなどの素材で作られています。そのため、人形の質としてはどうしても安っぽさが目立ってしまうことが否めません。
大きな人形は特に作りや素材の安さが一見してわかるため、注意が必要です。
まとめ
五月人形は唯一に規格である「号」のサイズ感すら業者により異なるため、絶対的な基準とするのが難しいのですが、そういった部分も含めて唯一無二の工芸品の難しさであり、面白さでもあります。
また、実際に飾る際には人形のサイズそのものよりも、飾り方の工夫がかなり重要なのも写真で実感いただけたのではないでしょうか?
今回紹介した解説や写真も参考に具体的なイメージを持ちながら素敵な一体に出会っていただけることを願っています!
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