五月人形は「相場という相場」を表すことが難しい商品です(大きさ、飾り方、素材、職人の手作りか大量生産品か...etc)。
とはいえ商品を選ぶお客様の視点から考えると、何かしらの基準はあった方が安心ですよね?
そこで今回は創業約100年の老舗『人形工房 左京』の4代目店主が、五月人形の相場に関して、考え方や参考にできる基準値などを示していきます。
その上で、相場も大切ですがそれ以上に大切にしていただきたいポイントについても解説していますので、ぜひご一読ください!
五月人形の相場は?人気商品のタイプ別にご紹介!
繰り返しにはなりますが、五月人形は「相場」を表すのが難しい商品。そこでいくつかの考え方として、人気の高い商品を中心に「人形の種類」と「人形の飾り方」の2つの観点から相場の考え方や目安を説明していきます。
人形の種類(兜・鎧・大将飾り)による相場の差
まず、五月人形のメインとして多く選ばれるのは「兜」「鎧」「大将(人形が甲冑を着たもの)」の3種類のいずれかです。
大まかな目安としては、同じくらいのグレードの商品であれば以下の感覚くらいが目安です。
- 兜と大将が同じくらい
- 鎧が兜・大将の1.5倍くらい
鎧は伝統的で正統な五月人形。一方、兜はその省略形といった位置づけ。そのため、同じようなランクの商品を比較すると、鎧の方が部品や工数が多い分、金額も高くなります。
とはいえ、体全体を守る鎧が頭を守る兜のみに比べて1.5倍程度の値段というのは、トータルのコスパで考えると鎧の方がお得と言えます。
また、大将飾りについては甲冑の質もさることながら、人形の質によっても価格が変わります。人形の表情に奥行きがあるか、胴体の動きが自然か、などといった工芸品としての人形のグレードと金額が比例するでしょう。
ただ、大まかに考えると大将飾りと兜飾りは同じくらいのグレードであれば価格も似かよってくる、と考えてもらえば良いと思います。
【5~10万円前後が相場】ケース飾りの相場
出典:人形の館石倉 公式
ケース飾りの相場は5~10万円程度です。
ケース飾りとは、ガラスやアクリルなどの透明のケースの中に人形を飾るスタイルの五月人形です。ケースごと出し入れができるため、収納や飾りつけが楽で人形をこまめに掃除したり手入れする手間も少ないのも嬉しいですね。
基本的にサイズが小さく、ガラスケース内の商品は品質がそこまで高くないことが多いことから、相場感としてはお安めになります。
【8~12万円前後が相場】収納飾りの相場
収納飾りの相場は8~12万円程度です。
収納飾りはシーズン外に人形を収納しておく箱の上に人形を飾るスタイル。別途飾る台や収納する箱を用意する必要がない、という意味では経済的なアイテムと言えます。
ただしこの収納箱そのものが木製で原価がかかってしまい金額も高めの傾向にあります。同じ価格帯で比べると人形にかける予算が限られてしまう分、兜・人形本体のグレードは低くなりがち。収納箱にどの程度の価値を見出せるかが重要です。
収納箱として魅力的でオススメなのは、桐製の飾り箱。白木で飾り台としてもシンプルながらも高級感があり美しく、収納の際にも虫、カビ、火にも強い優れもの。桐箱自体の金額が相応ではありますが、十分に魅力的な商品といえます。
【8~15万円前後が相場】平飾りの相場
平飾りの相場は8~15万円程度です。
平飾りは平らな台や敷物を飾り台として、家具などの上に直接飾り付けをするスタイル。
台や箱代がお安く済む分、人形自体の品質は同じ価格帯で言えば最も高いことが期待できます。
飾り方の自由度も高く、工夫次第で限られたスペースに最適なお飾りができます。兜・鎧・人形本体そのものにこだわりたい方には特におすすめできます。
ただし、良くも悪くも人形自体の存在感が強くなるため、安っぽい人形はごまかしがきかないでしょう。
そういった場合は左右に弓太刀や、横に鯉飾りなどを付け加えると華やかになりつつ、焦点を広げることができるのでおすすめです。
【10~15万円が相場】着用鎧・着用兜の相場
着用鎧・着用兜の相場は【10~15万円】程度です。
着用鎧・着用兜はその名の通り実際にお子様が着用できる五月人形。
飾り物としても大きなサイズでインパクトがあることはもちろん、着用して遊べるのは高得点ですね。
一方で、お子様が着用しても安全なよう軽量なプラスチックやアルミなどの素材で作られており、しかもサイズが大きいので、鑑賞用としては物足りなさを感じることでしょう。その上で相場は少しお高め。伝統工芸品をお探しの方・人形の質にこだわる方にはあまりおすすめできません。
相場よりもあまりに高い・安い五月人形がある理由
五月人形のおおよその相場を紹介しましたが、この相場の範囲内に収まらない商品も数多くあります。あまりに高い商品・安い商品が存在する理由について、注意点も含めて解説します。
素材や作りの違い
人形そのものの素材や制作工程が違えば当然原価が違うため、商品の金額は大きく変わります。
プラスチックやアルミなど安価な素材で大量生産ができる小さな人形であれば数千円の商品もあります。逆に本格的な甲冑素材を使った製品や、金箔押し・漆塗りなど、伝統工芸の技法が盛り込まれている五月人形は高額になりがちです。
工業製品のように量産できるものなのか、職人の手作りなのか。また、名のある甲冑作家の手作りの人形であるかどうかによっても料金が大きく変わります。
値引き前提の「二重価格」には注意
品質に見合うお値段で買い手の納得感があれば問題はありませんが、注意しなければならないのは古い業者の間で未だに存在する「二重価格」問題。
店頭では高額な定価を提示し、お客様との交渉の中で段々と安くなる、というケースがあります。しかし、値引きを前提とした定価を掲げる二重価格の場合、値引き後の価格にも信憑性が無いのが現実です。
相場という相場がない、唯一無二の商品が多いだけに事前リサーチによる対策も難しいです。商品リサーチと同じくらいにどのお店・業者から購入するかの見極めがより重要になってきますね。
五月人形は相場よりも「大人の」納得感が重要!
五月人形を選ぶ上で、安かろう悪かろうな粗悪品・不当に高い価格の商品を買ってしまわないために、相場の目安を把握しておくことは大切その上で、それ以上に大切にしていただきたいのが人形に対する「大人の」納得感です。
人形は子供のためのお守りですが、毎年飾ったり手入れをしたりと実際に管理することになるのはご両親様など身近な大人。
そして、子供は身近な大人が人形をどのように扱っているかを目にしながら育ちます。これは大人が思っている以上に子供の価値観の形成に大きな影響を与えます。
モノを大切にする心、「伝統」を大切にする心、子供の成長を願う両親・祖父母の想いをくみ取る気持ち・・・
どういった想いを重視されるかはご家庭によるとは思いますが、人形をぞんざいに扱う気持ちがあると、子供はそれを敏感に感じ取ってしまいます。
そういった意味では「相場と比べて高い・安い」といった基準だけではなく「大人が惚れ込める・本当に気に入った」という納得感を大切にしていただきたいです。
まとめ
五月人形は一点物が多く、相場という相場をつけにくいカテゴリー。しかし、大まかな目安や金額の考え方を把握しておくことで、粗悪品や不当に高額な商品の購入を回避できるようになるはずです。
また、五月人形の購入においては相場以上に、購入する大人が人形への対価を支払うことへの納得感も重要なので、ぜひそういった視点も持って後悔のないように、そしてお子様1人に1度きりの商品選びをお楽しみください。